医薬品クライシス 78兆円市場の激震 (佐藤健太郎著 新潮新書)

「2010年、もう新薬は生まれない。」と本の帯に書かれています。2010年を中心として日本のブロックバスター(巨額の利益を生み出す新薬)の特許が次々に切れること、ジェネリックや日本が大きく遅れているバイオ医薬の台頭や、メガファーマの買収合戦に日本企業も巻き込まれていく状況など、医薬品業界全体の激変ぶりを記述、予測した本で、そもそも「有機化学美術館」(http://www.org-chem.org/yuuki/yuuki.html)という美しいサイトを運営するヒトが書いたんだ、ということで、手に取ったのでした。科学ジャーナリスト賞(日本科学ジャーナリスト会議)2010というのを受賞したとのことです。しかし悲しいかな一読では頭にぼんやりとしか内容が入ってこないよ。きょうの校閲、きょうの嗚咽。
でもそのなかで印象的だった話をひとつ。アルツハイマー病など、有効な薬がなかなか生まれないのは、動物試験の難しさが一因であると書いてあってそうだなあとつくづく思いました。炎症、高血圧、糖尿病などは注射や遺伝子組換えで疾患モデル動物がつくれるけれど、アルツハイマー病では、記憶力を減退させたマウスなどが使われて、記憶力を測定する。それがアルツハイマーの症状の評価となりえるのかどうか?症状の改善の数値化が難しい中枢系の疾患では、まずこの動物試験の段階からして茨の道なんだなあと思いました。